IC-705で山岳移動運用(FT8)

はじめに
 山岳移動運用において、IC-705を使ってFT8などの運用をする場合の設定やバッテリーなどについて掲載しています。山岳移動でのアンテナ等については別に掲載しています。

IC-705のファームウェアバージョンが1.20になり、プリセット機能が追加されたので、設定方法について内容を変更しました。(2021/01/25)

 

FT8の設定&GPSによる時刻補正

IC-705はUSBポートが実装されて、サウンドボードやGPSも内蔵されているのでPC(タブレット)とはUSBケーブル1本だけで接続してFT8を運用できるので大変便利です。山岳移動では余分なインタフェースやPCの時刻補正のための装置も持参することもなくスマートに運用することができます。

設定のポイントは

 ■ FT8に関する設定はプリセット機能で、GPS関連はプリセット項目にはないので個別に設定。
 ■ IC-705本体側の設定については、ファームウェアバージョン1.20でプリセット機能が搭載されたのでプリセット機能を利用する。IC-705のCIーⅤのアドレスをIC-7300のアドレスである「94」に変更して、PCソフト側ではIC-7300として認識させる WJST-X
  *ソフト側(WJSTX 2.2.0、JTDX)にIC-705がRigの選択項目にないためなので、ソフト側が対応すれば今後はこの操作は不要になる(Wsjt-x 2.3.0、JTDX2.2.0-rc154以降では対応済)

 
 ■ IC-705用のUSBドライバをインストールして、2ポート(PortA,PortB)のCOM番号を得る
 ■ IC-705内蔵のGPSをPC側から見えるようにするように設定する(PortBのCOM番号を使用)

 ■ 接続に使用するUSBケーブルはシールド付きを推奨。最低でもUSB端子(ハウジング)間で導通があること。パッチンコア等で回り込み対策をすること

 FT8の設定 

1.IC-705用USBドライバーの組み込み
 IC-705をPC側から制御できるように、ICOMからUSB接続用のドライバーをダウンロードして、ICOMが提供している説明書に則りPC側にドライバーをインストールします。

2.USBドライバの確認
 ドライバーが正常に組み込まれると、システムのデバイスドライバーの一覧で下記のようにCOMポートに番号が割り当てられます。この例では、COM-21にCI-Ⅴ用としてPortAが、そしてCOM-19にPortBが割り当てられています。ポートの表示については、各PCによっては表示が変ることがあります。COMの番号はそれぞれのPCの状況により変わります。
このCOM番号をメモしておきます。この例では、OCM-21がPC側のソフトでCAT制御として指定する番号になります。COM-19はPortBに割り当てられ、IC-705内蔵のGPSからの信号を取得するCOM番号になり、PC側のGSPのソフトで指定するCOM番号になります。

2-1 サウンドボードの確認

 

デバイスマネージャーでIC-705内蔵のサウンドボードが認識されているかを確認しておきます。「サウンド、ビデオ、およびゲームコントローラ」で 「USB Audio CODEC」 がIC-705の内蔵サウンドボードになります。

 

3.IC-705本体側の設定
 IC-705のプリセット機能によるCI-Ⅴアドレス、変調入出力レベル等の設定 (ファームウェア1.20以上の場合 2021/01/25追加

 2021年1月22日にICOMよりファームウェアのバージョンアップのお知らせがありました。Version 1.20 になりFT8などもあらかじめ設定した内容でワンタッチで切り替えできる、プリセット機能が追加されました。FT8については、このプリセット機能を使うと非常に便利なのでFT8に関する設定はこのプリセット機能で設定するほうが良いので、設定方法について説明を変更します。従来の個別に設定することも可能ですが、プリセット機能を使用したほうがよい。プリセット機能についての詳細はICOMの資料(仕様変更のお知らせ)に説明されていますので、一読しておくことをお勧めします。

プリセットは5個設定でき、あらかじめ「1:通常」と「2:FT8」が設定されています。プリセットメモリできる項目は下記になります。

水色で示した、CI-Ⅴアドレス、変調レベル、プリセット名(必要に応じて)を変更します。他の項目はICOM提供の初期プリセットメモリ(FT8)で変更はしなくてももOKです。*CI-ⅤアドレスはWSJT-X:2.3.0以上およびJTDX:2.2.0-rx154以上であれば変更の必要はない。 デフォルトの A4 とする

 

ファームウェアのバージョンが1.20以上になると、MENU画面が下記になります。

3-1.PRESETをタッチします。

3-2.デフォルトで設定されているプリセット 「1:通常」 「2:FT8」 が表示されます。ここでFT8についてのプリセット項目内容を変更しますので、[2:FT8]をタッチします。

3-3.ICOMがデフォルトで設定してある設定済みプリセットメモリを読みませるので、[はい]をタッチします。

3-4.プリセットメモリが正常に読み込まれると、「使用中」になります。「使用中」になっていると編集できないので、「解除」をタッチして編集できるようにします。

3-5. 確認メッセージが表示されます。解除して編集できるように、「はい」をタッチします。

3-6.読み込んだプリセットされた内容を編集するために、[2:FT8]を 長めにタッチ します。 *長タッチ(1秒程度)がポイント

 

3-8.プリセットメモリーを編集をタッチして、個別項目の編集をします。

3-9. まずは、プリセット名を変更します。*変更しなくてもOKですが、わかりやすい名称にするとよいでしょう。

3-10. 今回は、Tablet用に設定するので FT8-Tablet としてみました。

 

3-11.モードやフィルターなどは初期値でOK、次項目に移動。

3-12.USB変調入力レベルの調整を行います。初期値は50%になっています。
左右のー+で変更します。この値は、PC(Tablet等)のサウンド出力レベルや使用するソフト(WSJT-X,JTDX)のPwrスライダとの関連で各自の環境に合わせる必要があります。初期値の50%では、PC側のサウンドレベルがかなり小さな値にする必要があったので、私の環境では20%としました。過変調にならないように、自分の環境に合わせてよく調整する必要がありますが、最終的には運用時にソフトのPwrスライダで調整することになります。ソフト入力以前に信号が歪んでいては元も子もないので。 調整箇所は3カ所で、本体のこのレベル調整、PCのサウンド設定、ソフトのPwrスライダです。IC-705の場合はALCが振れないようにすることが重要です。 ソフト側では「Fake it」をONにしておくことも有効です。  このレベル調整とWindows10およびwsjtx、JTDXとの関連はここを参照してください。

3-13 USB変調出力レベルの調整。初期値の50%になっています。ほとんどはこの50%でよいと思います。今回は、USBに載せる信号レベルを上げて耐ノイズ性を上げるためにすこし増加して60%にしてみました。このレベル調整とWindows10およびwsjtx、JTDXとの関連はここを参照してください。

 

3-14. CI-Ⅴのアドレスを変更 

 WSJT-XやJTDXのソフトで、RIGの選定でIC-705が現在登録されていないので、仮にIC-7300としてPC側のソフトで認識させるために、CI-Ⅴ用のアドレスを変更します。ICOMの機種一覧では、IC-7300はアドレスが「94」(16進表記)になっているのでここで「94」とします。

注:ソフトをWSJT-X 2.3.0または JTDX 2.2.0-RC154 以上を使用する場合は、Rigの一覧にIC-705が登録されているのでCI-Ⅴのアドレスは変更しないで、「A4」のままにしてRigの選択でIC-705を選択する。(2021/2/05追記・修正) 
このアドレスを分けてプリセットする手法もあります。例)Wsjt-x 2.3.0用と 2.2.0用など

3-15.左右のー+で94hと変更

3-16. CI-Ⅴのアドレスが 「94h」 に変更された

3-17. 変更したプリセットデータを保存するため、<<書込み>>をタッチ

3-18. 確認メッセージが表示されるので、「はい」をタッチ

3-19. 同様な方法で自宅PC用にプリセット3も設定してみました。プリセット名が「FT8-Tablet」に変更されました。

3-20 最終的に設定したFT8のプリセットメモリの内容

3-21 プリセット機能を使用中(変更した内容を読み込んだ状態)

 

4.PC(タブレット等)と FT8を操作するソフトの設定

 4-1 WSJT-Xの場合 (このソフトの事例は バージョン2.1の場合の例です。*同時に使用しているFT-817の場合に2.2では動作が不安点のため2.1にしていた関係で一つ前のバージョンになっている)

IC-705がRigのリストにないので、IC-7300を選択します。この場合は、IC-705の本体でCI-Ⅴのアドレスをデフォルトではなく、IC-7300のアドレスに「94」(16進表記)変更しておきます。(3項で実施)*wsjtx2.3.0以上の場合はCI-Ⅴアドレスは変更せずに、ここでIcom IC-705を選択する

・タブ画面はRadioを選択します

・Rigは IC-705はないので、3項で変更したCI-ⅤのアドレスであるIC-7300を選択 *wsjtx2.3.0以上の場合はCI-Ⅴアドレスは変更せずに、ここでIcom IC-705を選択する
・①のシリアルポートは、デバイスドライバの一覧で確認したCOM番号を選択(この例ではCOM-21)
・②ポーレートは自動で追従されるので、PCの処理能力によるが9600か19200(CI-Ⅴの上限?)あたりを選択(9600が適当か)
・CI-Ⅴの通信を③データは8ビット ④ストップビットは1 ⑤ハンドシェイクは None ⑥PPT制御はCAT ⑦モードはNone ⑧SplitはNoneとします。
・ここで、TestCATおよびTestPTTの試験をします。 正常に動作しないときは、COM番号かIC-705のCI-ⅤのアドレスとRigの選定の指定に相違があることが考えられます。

次にタブをAudioにして、サウンド関連の設定を確認にします。

サウンドボードの名称がIC-705となっているのは、PCのサウンド設定で名称を変更(IC-705)にしているためです。
通常はスピーカとマイクになっています。

・Inputは IC-705(USB Audio CODEC)を選択します。*IC-705の内蔵SBはUSB Audoi CODECとなっている
・OutPutは IC-705(USB Audio CODEC)を選択します。

 4-2 JTDXの場合

 ・設定内容はWSJT-Xの場合と同様です。

・Rigは IC-705はないので、3項で変更したCI-ⅤのアドレスであるIC-7300を選択 *JTDX2.2.0-rc154以降の場合はCI-Ⅴアドレスは変更せずに、ここでIcom IC-705を選択する

5.サウンドボードのレベル設定

 IC-705の内蔵サウンドボードの確認とソフトのレベル調整を行います。IC-705の内蔵サウンドボードの入力感度がかなりよいので、PC側のサウンド設定でレベルを下げる必要がありました。このレベル設定はそれぞれのPCにより変化しますので、IC-705側のALCとPOWのを見ながら調整することになります。PC側からの出力レベルが大きすぎると、過大入力で歪んでしまいます。

ファームウエアバージョン1.20以降のプリセット機能を使用した場合の関連図

IC-705_Sfound_set

 

PC側で システム > サウンド で確認

5-1 システムを選択します。

5-2 サウンドを選択

初期は出力デバイスで 「スピーカー(USB Audio CODEC)、入力デバイスはマイク(USB Audio CODEC)を選択します。

次に出力の音量を調整します。 マスター音量のレベルを調整して、IC-705のALCが振れる直前で、Powが出ていることを確認します。このレベル調整は、IC-705側を接続してWSJT-XやJTDXのソフトを動作させて行います。私のPCではWJST-XのPwr(出力レベル)が70%のときにPCのマスター音量の出力レベルが9ででしたが、この値はPCにより変化します。歪んだ電波をださないためには十分なレベル調整が必要です。実際の運用では、このシステム設定でレベルを設定したあと、使用する通信ソフト(WSJT-X,JTDX)のPwr(送信出力)スライダーで調整することになります。

*この出力調整は3カ所で行うことができます。

 5-2-1.IC-705本体側の設定 

 ここの記述はファームウェアバージョン1.2以前の場合の内容です。本体のファームウェアバージョンが1.2になっている場合は、3項で説明した方法でレベルの調整をしてください。プリセットメモリを読み込むと下記で設定したデータは上書きされて無効になります。

—ファームウエアバージョン 1.2以前の場合—-

(取説13-13) SET >外部端子 >変調入力 初期値は50% 上記の説明では、初期値のままでレベルを調整したときの値です。PC側のマスター音量があまりに低い場合は数値を下げて、PC側のレベルを上げた方がノイズ対策には有効。上記の例での「9」は低すぎるようです。

 現在は、IC-705の変調入力を初期値の50%から20%に変更して、PC(タブレット)側の出力レベルを57にして、wsjtxのPwrスライダは85%程にしました。この設定でALCは振れる直前です。(2020/12/11 追記)


 

 

サウンドの設定

5-3 出力デバイスの「デバイスのプロパティ」を選択して、詳細情報の設定と確認を行います。

出力デバイス名はスピーカーになっていますが、ここでIC-705に変更しておくとあとで解りやすくなります。 「IC-705」と入力して「名前の変更」をクリックします。WjstxやJTDXのサウンドカードの入力、出力の選択でここで変更した名前が(IC-705)が表示・選択することができるようになります。

5-4 関連設定の 「追加のデバイスのプロパティ」をクリックして詳細情報を設定、確認をします。

 全般タブでアイコンを変更しました。IC-705に見えないがスピーカーよりはましな、四角の箱を選択してみました。
 制御情報が USB Aodio CODEC になっていることを確認

5-5 レベルの確認
 マスターで設定した値が表示されます

5-6 各詳細項目を確認

 

5-7 入力デバイスの確認と設定

デバイス名をIC-705に変更してみました。

ボリュームの調整でWSJTーXやJTDXの入力レベルが50-60%程度になるように調整します。私のPCでは28%で入力レベルが60%程度でした。

 

5-8 上記のサウンド関連の設定を変更した結果、PC側のサウンドの設定状況は下記のようになりました。
 出力、入力のデバイス名がIC-705に変更されています。

5-9 デバイスマネージャーでの確認
 オーディオのスピーカー、マイクの名前がIC-705に変更されています。

 

 

以上でCATおよびオーディオの設定が終了しました。

これで送受信ができるようなりましたので、まずは受信してみます。WSJT-Xでの周波数の変更に同期してIC-705の周波数が変更することを確認します。
周波数が同期して変更できるときは正常にCAT制御ができています。続いて、WSJT-X等のソフト送信をします。
この時にエラーが発生してIC-705との接続が切断される等が発生する場合は、回り込みの発生が考えられます。対策として、パッチンコア等をUSBケーブルに挿入します。また、使用するUSBケーブルはシールド付きとします。最低でも、USBケーブルの端子(ハウジング)間に導通がないものは使わないようにしましょう。(2023/02/04追記)

 


 IC-705内蔵GPSによるPC(タブレット)の時刻補正 
FT8は時刻のズレがあると正常に動作しないので、時刻の補正が重要になります。IC-705には内蔵のGPSがあるのでGPSから正確な時刻を取得して、PC(タブレット)の時刻を補正することができます。山岳移動で使用する場合はネット環境が使えないことがあるので、内蔵GSPが使えることは非常にメリットがあります。
WSJTーXやJTDXの利用するときに接続したIC-705のUSBは内部でCOMポートを2ポートもっているので、そのうちの一つ(PortB)をGPSとの通信に使用します。*PortBは取説・設定画面ではUSB(B)と記載
まず、IC-705側でGPSを使用し、その結果をCOMを通じて出力できるように設定をします。
IC-705側の設定のポイントは、USB(B)端子機能をOFFにして、GPS出力にすることです。USB(B)を使ってGPSの信号をPortB(COMx)に出力させることです。*USB(B)とはPortBのこと(デバイスドライバ一覧でCOM番号との対応を確認するとよい)

GPSからの衛星情報信号については、GLONASSを使うとより電力を使うので山岳移動では通常のGPSで十分と思われます。GPSからは時刻だけを利用するのであれば、GLONASSは必要ないでしょう。

Windows側の時刻設定ソフトは GPS時計 を使ってみました。単に時刻だけを設定するなら十分のようです。
 下記の画面は、GPS_Clockが動作して時刻補正を実施している状態です。

このソフトで 「ツール」から 通信ポートを選びます。ここでは、IC-705のPortBであるCOM19を選択しています。このCOM番号はデバイスマネージャーで確認した番号になります。 ボーレートは自動追従のようなので、あまりスピードが重視しなくてもよいので9600にしてみました。

 


IC-705用小型マイクの制作

付属のマイクも十分に小型で機能もありますが、FT-817用に作製したものと同様に小型のマイクを作製してみました。回路、CRはHM-9に準じていますが手持ちのものを使用したのですこし違っています。コンデンサマイクはストックしてあった秋月で販売されているWM-61A相当品を使用しました。2.5mmの4Pプラグは付属のマイクのようにL型を(マル信無線電機製、TOMOKAで購入<千石通商>)(ストレートタイプなら秋月にもある)を使ってみました。L型のほうが半田付けが容易のような気がします。ストレート型は狭いので大変です。ケースもストックしてあったAitendoのもの、SWも同様です。ケーブルも手持ちの2芯(単芯でよい)があったので、単芯として使用。SWの部分はカバーが取り換えられるので、適当な色のカバーを入れ替えています。
 R:33k C:0.01μ C:470pf  *RはHM-9に準拠して33kを使用しましたが、WM-61A相当品ならば2.2kでよいかもしれません。

 

 

画面保護と運搬用箱

IC-705は独特な形で液晶画面での操作が主になるので、液晶の保護とつまみ類も保護も考えなければなりません。IC-705全体を覆うために、カメラケースを使う手段もありますが、山岳移動ではザックにいれて移動するのである程度強度と防水が必要です。
 液晶と全面のつまり類の保護は、建築用の断熱材(押出法ポリスチレンフォーム)の余りがあったので使ってみました。以前に、車中泊用に使った断熱材で、厚さが20mmあったのでちょうどよかった。発泡スチロールよりは密度が高く丈夫です。穴あけは、100円ショップの「発泡スチロールカッター」を使用しました。メインダイヤルのところは、下部を最初は残しましたが、厚みがなく強度がないので最終的にカットした。周りは、テープで補強してみました。

建築用断熱材 押出法ポリスチレンフォーム(20×910×1820)の切れ端

発泡スチロールカッター と切り抜いた押出法ポリスチレンフォーム、垂直に円形に抜くのは難し。

切り抜いた断熱材を装着したIC-705 厚みが20mmあるのでつまみ類は表にでない。

運搬用の箱にいれた状態。 残っている部分に、ケーブル類、小型マイク、予備のバッテリ、6m用のV型短縮ダイポールセット等を入れている。IC-705本体とのあいだには仕切りを設置しています。


WSJT-X JTDX FT8CN (.log .adi)からTurboHAMLOG Airhamlog eQSL SOTA POTA LoTW用ファイルに変換

 山岳移動運用では、ネット環境に接続できないことが多く、ネットに接続できたとしてもモバイル環境ではタブレット等に関連ソフトを入れてJT_LinkerによりTurboHAMLOGリアルタイムに保存することは、マシンの能力や容量により難しい。そこで、移動運用後に帰宅してから運用に使用したWSJT-X、JTDXやFT8CNに保存されているログデータ(.log .adi)からTurboHAMLOG、AirHamlog(CSV)、eQSL、SOTA、POTA、LoTWファイルにオンラインで変換できるツールを作製しました。詳細はここに掲載しています。


バッテリーは?

IC-705はリチュウムイオン電池のバッテリーパックが付属しています。携帯等でリチュウムイオン電池による事故が多発しているので取説にも注意書きが多く記載されています。(安全上のご注意) また、IC-705は本体に時計用のバックアップ電池が内蔵されています。

リチュウムイオン電池のバッテリーパックを長く実容量を減らさないで使用するためには、リチュウムイオン電池特有の扱いをしたほうがよさそうです。注意書きにもあるように、満充電直後の再充電が一番よくない。リチュウムイオン電池は充電時の温度も重要で、マイナス気温では充電はしないほうがよい。また、あまり高温もよくない。人間が快適に過ごせる気温が目安でしょうか。
リチュウムイオン電池特有の充電管理としては、満充電にしたままにしないことが重要、特に夏場の温度が高いときにこれを繰り返すとダメージを受けて(化学反応が進む)、バッテリーが膨張する原因になります。移動運用で前日の夜あたりに満充電することが多いと思います。満充電したら、30分程度電源を入れて少し放電をしておくことがよい。IC-705の付属バッテリーは、満充電すると8.2v(8.4v)と表示されます。すこし放電させて、8.0v以下、7.8v程度(95%)がバッテリーのためにはよさそうです。理想は80%のようですが、それではもったない気がしてしまうのはアマチュアか。バッテリーを外して長期保管するときは、容量を50%程度(ストレージ保管)にするとよいようです。
 

実施すべきポイント
■フル充電したら、すぐ使わないときは必ず少し(受信で30分程度)放電させて電圧を下げておく。
■充電時は周囲温度にも注意(人が快適な温度が目安)
■使用温度が0度近くになると、温度制御でPowが落ちるがそのような状態では使用しない

 

内蔵時計バックアップ電池との関連

 取説(1-1)には、「長期で使用しないときはバッテリーパックを取り外してください。本製品の電源を切った状態でも、常に微少の電流が流れていますので、電池が消耗する原因になることがあります。」と記載されています。
また、取説(14-3)には「時計バックアップ用電池の充電 時計用のバックアップ電池として、充電式電池が組み込まれています。電源が接続されている状態では、常にバックアップ電池が充電されます。付属のバッテリーパック、または電源を本製品に接続しない状態が長期間つづいた場合、この充電式の電池電圧が低下して、時刻設定がリセットされます。このような場合は、電源を本製品に接続後、時刻を再設定してください。なお、無線機の電源のON/OFF状態に関係なく電源が接続されていれば、充電されます。」
 このバックアップ電池については 「IC-705の時計用バックアップ充電式電池の取り扱いについて」の記事によると、バックアップ電池の保時時間は1ケ月で、充電に要する時間は48時間(2日間)になるとのICOMからの回答だそうです。
そうすると、IC-705を使用しない(長期)場合には取説に書いてある内容と矛盾することになります。長期とはどのくらいの期間かは具体的に書かれていませんが、1-2週間程度ならバッテリパックを外しておいても問題なさそうですが、時計用のバックアップ電池の保持期間を考えると、1ケ月以上の長期保存の場合は、バッテリパックを外さないほうがよさそうです。外しておいた場合は、本体の電源はOFFにして外部電源を接続して連続で2日間程度は通電しておく必要がある。時計用のバックアップ電池が放電すると、時計をリセットすれば問題ないようですがこれを繰り返すと、時計用バックアップ電池が劣化して最終的には交換作業が発生する恐れがあります。バッテリパックを充電したあと(80%容量)パックを装着したまま、本体を保存した場合に1ケ月でどれくらい放電するかはデータがないので不明でが、基本としは定期的に使用するならばバッテリパックは装着しておいたほうが無難なような気がします。

ポイント
■内蔵時計用バックアップ電池は充電式で、充電に48時間、保持期間は1ケ月である
■本体を使用しないで、電池バックを外しておく場合は1か月以内に外部電源を接続して時計用バックアップ電池を充電すること。

外部接続バッテリー

 付属のバッテリーパックでも山岳移動運用では2時間程度の運用であれば十分な容量があるようです。運用スタイルによるとはおもいますが。
長時間の運用や5W以上の出力で運用する場合は、外部バッテリーが必要になります。最近は、USB PD(PowerDelivery)規格のモバイルバッテリー(パワー・ルールで45W、60W)利用するケースも増えているようです。昇圧の性能があがり変換ロス、ノイズの低減で問題なく使用できるようです。まだ、自分では試していないのでなんとも言えませんが。
 私は、FT-817で使っていたスタイルで外部接続バッテリーを共有しています。バッテリーはリチュウムイオンを4個直列、充電用にバランス端子を出して、電源の接続端子にはXT60コネクター(以前はT型でしたが、XT60に変更)、バッテリーと電源端子の間にダイオード1個を直列接続して、電圧降下と逆接続防止を兼ねています。バッテリーとの電源端子の間の電源コードはすこし長めにして、冬の期間はバッテリーの保温(自身の衣類の中に入れて)ができるようにしています。リチュウムイオンバッテリーは寒さに弱い(0度以下では起電力が大幅に落ちる)ので寒さ対策が必須です。人間も防寒対策が必要なのと同様にバッテリーも同じです。しかし、IC-705は本体側で0度付近の気温になると出力を低下(0.5w)させる機能が搭載されています。この機能が、外部バッテリーを使用したときにも働くのかは不明です。バッテリー以外に液晶も温度の低下に影響を受けるので冬山での運用は本体の防寒対策を考えたほうがよさそうです。動作環境は取説には、-10度~+60度とはなっていますがどうでしょうか。本体はこの範囲でも、バッテリーは別の範囲になるか。発売されてから冬を越していないので、これから冬季での運用報告がでてくるでしょう。

 

 

取説に書かれているバッテリー関連の記述についての疑問点
取説(1-1)の注意事項の
 ◎外部電源で運用するときも、バッテリーパックは必ず装着してください。
となっています。なぜなのか、理由が不明です。どんな理由があるのでしょうか? 裏のバッテリーパックを装着する端子に、何かが接触すると不具合が発生するためなのだろうか。

★BP-273の改造による背面バッテリパック端子からの給電★

IC-705は外部電源を利用する場合はリチュウムイオン電池では最低3Sが必要で3S(11v)では5Wの送信はできない。かといって、4Sや15vでのPDでの給電は効率が悪そう。背面にセットするバッテリバックは2Sで7.4Vでリチュウムイオン電池の2Sになっている。内部で昇圧しているので、通常に考えればここに2Sの高容量のバッテリを付けて運用するほうが、バッテリィの重量もかるくなるはずである。しかし、高容量の純正バッテリィは高価で長時間での移動運用で複数準備するのは大変です。
 そこで、よく冷却に改造されているBP-273の電池用パックを改造して、ここから2Sのリチュウム電池を供給することにした。BP-273は内部に電池3本からの電圧を昇圧する回路が組み込まれている。今回はこれは不要なので取り外し、給電部につながる端子に直接線を接続して外部に取り出すことにした。この電池パックはIC-705側に接続する丸型の端子は特殊な3点で回す方式になっているので、端子はとりはずせないようになっている。このため、この電池パックは充電時の温度制御につかうサーミスタの端子がGND側に接続されて切り離すことはできない。したがって、この電池パックでは充電はできないようになっていた。サーミスタの回路を切断でき、サーミスタの14kΩを入手できれば充電も可能のようですがすこし危険なきがする。
 今回は、充電についてはバランス充電ができる装置があるのでそれを利用することにした。また、極性を間違って接続すると、IC-705の本体が壊れてしまうので、逆接続防止のダイオードとヒューズをいれておいた(逆接続で切断)。

本体との接触部分は円形で専用工具でないと外せない。

昇圧回路を取り外して、電源ケーブルを直接接続。サーミスタ用の端子は金属板でグランド側に接続されている。この部分はネジ止めになっているが、表の円形端子は特殊工具でないと回して外すことができなかったので、サーミスタ端子はGNDに接続のままとなるので、この端子を利用しては充電はできない。

右上は取り外した昇圧回路、電池ボックスは防水仕様になっている。

 

逆接続防止のダイオード、ヒューズは車用の5Aを使用。ここは、このバッテリィパックを装着するまでに電池を接続して、LED点灯等により正常に電圧がかかっていることを確認する方式のほうが簡単でよいかもしれない。

外部への取り出しは短くして、XT30の端子とした。これは、通常の外部電源と識別するためにコネクタを変更した。また、冬季は外気温が低くなり電池の活性化が低下するのでコードを長くして、電池を保温(ポケット等にいれて)して運用できるようにした。


 2Sのバッテリィは、18650のリチュウムイオン電池と使わなくなったタブレットから取り出したリチュウムポリマーを使用してみた。このリチュムポリマーはラベルには6000mAHとなっていたが、実際に数回の充放電をして測ってみたら3200mAHであった。重さは136g(ケーブル込み)であった。

消費電流については、外部電源での測定データはブログ等に掲載されていますが、背面のバッテリィ端子からのデータはなさそうなので測定してみました。

外部電源で12Vや15Vで給電する場合に比較して、電圧が低いだけ電流が増加していますが、電圧との兼ね合いから考察するとかなり効率がよいと思います。外部電源で4Sを使って給電するよりは、2Sであれば軽量化がはかれます。特に、5W以下で運用するなら、電池パック背面からの給電はよさそうに思います。ただし、逆接続や規定以上の電圧を加えると本体が致命的に壊れる恐れがありますので、改造による故障等は責任を負えません。あくまでも自己責任でお願いします。

 

 


USBアイソレータの制作

 USBケーブルからの回り込み防止のため、USBアイソレータを制作してみました。専用のIC等は秋月電子で販売されているAnalog Devices社のADuM3160、DCDCコンバータ(5V絶縁タイプ)はMINMAXのMAU102、ケースはタカチSW-55、基板は以前Aitendoで購入してあったジャンク基板、USBケーブルは古いマウス用等を再利用しました。普通はUSBコネクタを入出力側につけますが、IC-705移動運用専用としたので、ケーブルの本数をへらすためにJST-XH端子による直結としました。回路はメーカのレイアウト例、DCDCコンバータ出力側には出力電圧を安定させるためには最低4mA必要なので、LEDをつけて7mAほど流しています。LEDはケースに隠れて見えないのですが。まあ、中華製のUSBアイソレータが安価に販売されているのでそちらのほうが安上がりかもしれません。

当初、IC-705側のUSBには電源(5V)を供給しなくてもよいのかと思い実験してみましたが、供給しないと認識されませんでした。
 このUSBアイソレータの効果については、まだ実践で試していないのでなんともいえません。実践で運用中にCATが制御不良になる事例もあまり体験していませんが、過去に1-2回ありました。ケースの部分だけ容積が増えますが効果があるか楽しみです。

◆注意◆

このUSBアイソレータを接続した場合に下記条件で不具合が発生しました。
事象としては、USBアイソレータを接続するとIC-705側が充電中のマークになって、USB・COM接続が落ちてしまう。
 条件は、付属のバッテリーパック(80%程充電済)で装着で運用 (外部電源利用では発生しない)
  IC-705の設定で
  ①充電(電源ONは OFF)/電源ONの状態で充電しない
  ②USB電源入力(スマートフォン、PC)は OFF/USB経由で電源供給しない
  になっている時に
  IC-705の電源が入っている状態で、電源が入っているPC・タブレットからのUSBケーブルをIC-705にUSBを接続する

 *USB電源入力をOFFに設定しているにも関わらず、USBアイソレータで接続するとなぜか充電モードになってしまうことが問題です。何かのチェックでDCDCコンバータの変換効率と出力電流が200mAと少ないことが影響しているのだろうか(2021/02/22追記)

原因と解決方法
 設定で「USB電源入力(スマートフォン、PC)をOFF」にしていても、アップストリーム側の電源を先にONにして、ダウンストリーム側(IC-705)にケーブルを接続してからIC-705側の電源をONにしないとダメなようです。IC-705側は電源投入時点で、USBの電源をチェックにいく順序になっているのではないでしょうか?。IC-705側が電源が入っていない状態でPC側(アップストリーム)がONになっているUSBケーブルをIC-705側に接続すると、IC-705のCHARGINGのランプが1秒程点灯してから消える。ここで何かチェックプログラムが働いていると思われる。したがって、USBアイソレータを使用するときは、PC側の電源を先にいれて、IC-705に接続してCHRGINGの点灯>消灯を確認してから、IC-705の電源をONにすればUSB・COMが切断されることはないようです。(2021/02/22)

IC-705 USBインタフェースについて
 上記のUSBアイソレータを使用するにあたり、IC-705側にどれだけの電流がUSBを通じて流れるのかデータを取得してみましたので参考に掲載します。
 条件は、
①IC-705は、USBポートで充電をしない設定(USB電源入力(スマートフォン、PC):OFF)
②PC・タブレットのアップストリームがON
③IC-705が電源OFF
 この状態で、USBケーブルをIC-705に差し込むと、IC-705のCHRGINGランプが1秒程度点灯した時に、およそ250mA前後の電流がながれ、CHRGINGランプが消灯すると0.33mAに低下し、その状態が継続する。
その後、IC-705の電源をONにしてWSJT-X等のFT8等のソフトを立ち上げて接続・運用しても電流は0.33mAで変化はない。この時のUSB端子電圧は、5.25vでした。なお、250mA前後の電流が流れている状態では電圧がかなり低下し不安点になっていました。DCDCコンバータの出力電流を超えているためと思われる。IC-705が電源ONの状態(動作状態)でUSBを接続すると、USB・COMが一旦接続後、接続が落ちてしまうのはUSB接続時のチェックプログラムでDCDCコンバータの電流容量不足により、USB電圧が不安点になってしまうためのような気がします。IC-705がOFFの時にUSBを差し込んでUSBのチェックを動作させてから、IC-705をONにするとUSBの状態チェックが澄んでいるので問題なく接続できるのかもしれません。(2021/02/26)

使用実績
 山岳移動で5山ほど使用してみました。アンテナは6mは短縮V型ダイポール、2mは2/3λヘンテナで地上高3m程度、40mはMicoroVert、出力は5Wで現在は回り込み等による異常は発生していません。

 


IC-705・WiFi接続でFT8運用(wfview)

 IC-705をWiFI接続でFT8運用する記事は別ページに掲載しています。

 

 


 

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